熊という生物について
こちらのサイトに掲載されている熊出没情報を解析しました。
クマ出没マップ | 汎用投稿システム Sharp9110
数え方
熊の数え方は「頭」です。
これは熊出没データ内で多数を占めていたという意味です。
全 11,532件のデータのコメント内で「匹」が使われていたのは1件だけでした。
体長
熊出没データに記載されている熊の体長は、多くが0.3m~2mの範囲内、特に多いのが0.5m~1.5mの範囲内です。
ほぼ全てのデータが目測だと思われ、誤差が大きそうなので集計などは行っていません。
現実的な数字で特に大きい値は 3m でした。(福島県 2023/09/25 18:40 ID:502)
最小値は 0.5センチメートル でした。(山形県 令和4年 8/19(金)午後6時55分(鶴岡市大山))
最大値は150mでした。(山口県 2024/06/05 19:30、2024/09/19 03:00、2024/10/13 17:45)
※最小値・最大値は誤記の可能性が高いです。
能力
熊が破壊したもの
熊出没データの中から、コメントに「壊」「割」などを含むデータを抽出し、
熊がどのような物を壊したかをまとめました。
- 壁:16件
- ガラス:5件
- 扉・シャッター:3件
- 小屋(の一部):2件
- 錦鯉用の自動給餌機:19件
- ミツバチの巣箱:19件
- 柵・電気柵:5件
- 箱罠:2件
- コンポスト:1件
- 金網:1件
- 冬囲い:1件
- トタン巻き:1件
「壁」は農作業小屋の壁から住居の壁まで様々です。壁の中に作られた蜂の巣や、小屋の中に置かれていた米などを食べた例が多くみられました。
木登り
木に登っている状態の目撃データが153件 (全データの1.32%)
さらに食痕や熊棚など、登ったと思われるデータを含めると271件 (全データの2.34%)
さらに木に爪痕が残っていた等の情報まで含めると561件存在していました。(全データの4.86%)
多くの個体が木に登れるようです。
「木に登ろうとしたが登れなかった」という目撃データは1件存在しましたが、柿の木にトタンを巻いていたことが原因と書かれていました。
木から転落する瞬間の目撃例も2件ありました。
福島県 2022/06/18 15:00
福島県 2023/08/31 07:00
木から転落死した例や、転落時に負傷して動けなくなった状態の目撃例は見つかりませんでした。
「熊が木の”上へ”逃げた」という情報は見つかりませんでした。
「木の上で寝ていた」という情報も見つかりませんでした。
「木から飛び降りて逃げた」とか「木の上から飛びかかってきた」という情報もありませんでした。
木に登ることが可能なだけで、木を積極的に活用している訳ではなさそうです。
木に登る理由
熊が木に登る時期と、その木が実をつける時期が概ね一致していることから、食べ物が目当てのようです。
しかし、実が熟していないはずの時期に木に登った例も少数ながら存在していました。
食べ物以外の理由で木に登る理由は不明です。
月 | 木の種類など |
---|---|
4 | ブナ(新芽を食べていた) |
5 | サクランボ |
6 | サクランボ(サクラ)、松、桑、柿、クルミ |
7 | サクランボ、ブドウ、桃、スモモ、リンゴ、柿 |
8 | 柿、ラフランス、スモモ、桃、栗、クルミ |
9 | 栗、柿、ミズナラ、クルミ |
10 | 柿、栗、リンゴ、クルミ |
11 | 柿、栗 |
12 | 柿 |
泳ぎ
熊が泳いでいる状態の目撃例は4件ありました。
三重県では海上での目撃例がありました。付近の陸地から少なくとも145m、対岸からは300m以上離れています。
食べ物
熊出没データから、熊が食べた(かもしれない)もの、誘因物と書かれているものを抜き出しました。
食べ物 | 件数 |
---|---|
柿 | 135 |
トウモロコシ、デントコーン | 27 |
米、玄米、稲穂 | 10 |
米ぬか | 23 |
笹 | 1 |
孟宗竹 | 3 |
タケノコ | 4 |
ロールベールラップサイロ(牧草を入れた袋) | 4 |
イチゴ(誘引疑いのみ) | 2 |
リンゴ | 18 |
ナシ | 17 |
モモ | 7 |
ラフランス | 2 |
スモモ | 5 |
サクランボ | 24 |
ブドウ | 9 |
桑 | 3 |
栗 | 53 |
クルミ | 25 |
ドングリ | 8 |
木の新芽、ブナのつぼみ | 2 |
カボチャ | 4 |
スイカ | 21 |
ジャガイモ | 1 |
サツマイモ | 1 |
水芭蕉の葉 | 1 |
ソバの実 | 2 |
イチョウの実(誘引疑いのみ) | 2 |
ニンニクの茎(食べたのかは不明) | 1 |
ハチの巣、ハチミツ | 34 |
ペットの餌 | 2 |
錦鯉の餌 | 52 |
養殖ニジマス | 1 |
鶏卵 | 1 |
鹿 | 3 |
生ゴミ | 9 |
投棄されたミカン | 1 |
ぼかし肥料 | 1 |
草 | 3 |
何か | 4 |
家族構成
目撃情報に記載されている個体数を集計しました。実際に家族かどうかは不明です。
目撃状況が「直接」であり、頭数の判別ができたデータ→7478件
幼獣かどうかの判別も不十分なため、この結果から一人っ子の割合を出すことはできません。
同時に目撃された個体数の最大値は5
同時に目撃された幼獣(らしき個体)の最大数は4
でした。
4頭以上目撃されたデータの内訳
構成 | 件数 |
---|---|
成獣1、幼獣3~4 | 1 |
成獣1、幼獣3 | 5 |
成獣2、幼獣2 | 2 |
幼獣4 | 1 |
人間と関係する行動
熊は人間を避けているか
人間に目撃される前に逃げた場合はカウントされないため、正確な数字は分かりません。
熊が人間を見つけて逃げたというデータは存在しています。
熊出没データ全体から目撃状況が「直接」のデータを抽出、コメントが書かれていない宮城県と人身被害だけが書かれている岩手県のデータを除外。
該当データ:7407件
上記のうち、コメントに「逃」を含むデータ:304件
「逃」が含まれる目撃情報の比率:4.10%
雑な集計ですが、約4%のデータで熊が逃げた・逃げている様子が目撃されています。
他にも「戻った」「立ち去った」という表現があるため、熊が逃げた件数の比率はもう少し高くなります。
上記には熊が車に気付いて逃げた例も含まれています。生身の人間を避ける率は不明です。
逆に人身被害の確率を出してみます。
熊を直接目撃したデータのうち、人身被害だけが登録されている岩手県のデータを除外:9520件
人身被害が発生したもの:55件
熊を直接目撃したとき人身被害に至る率:0.57%
熊と遭遇した場合、襲ってくる確率よりは逃げる確率の方が高いようです。
熊が逃げた例
熊が逃げた、立ち去った、移動したと記載されているデータから、原因が書かれている物をまとめました。
“逃”,”去”といった文字列が含まれているデータを抽出しただけなので、件数は厳密なものではありません。
- 車に気付いた:19件
- 車のクラクション:11件
- 車のヘッドライト:2件
- パトカーのサイレン:1件
- 列車に気付いた:1件
- 列車の汽笛:1件
- 花火、爆竹、火薬、空砲:19件
- 人間に気付いた:10件
- 人間が大声を出した:7件
- 人間が手を叩いた:1件
- 熊を殴った:1件
- 熊鈴の音:4件
- 犬が吠えた:2件
- 犬が追いかけた:2件
- 鉄の棒を打ち鳴らした:1件
- 木の棒を打ち鳴らした:1件
- 追い払った:1件
- 大きな音を出した:1件
熊との遭遇予防手段として「鈴やラジオ」が定番ですが、ラジオの音で熊が逃げた例が見つかりませんでした。
熊を追い払う目的で音を使う場合は、突発的に大きな音を出した方が効果が高い可能性があります。
人間に驚いた熊が後ずさりして川に転落した例もありました。(新潟県 2023/6/10 8:55)
熊が逃げなかった例など
- 車で接近しても逃げなかった
- 車を追いかけてきた
- 目撃者を威嚇して逃げた
- 熊が逃げた先にいた人が襲われた
- 熊を追い払おうとして襲われた
柿の木との関係
熊出没情報のコメント内に「柿」・「カキ」を含むデータが611件見つかりました。
全データのうち5.35%、
コメントが書かれているデータに絞れば6.83%が柿と関係しています。
場所に注目
コメントに「柿」「カキ」を含むデータだけを表示した状態
多くのマーカーが山と里の境界付近に見られました。
柿の木を目指して市街地深くまで入り込むよりは、生息地の近くにある柿の木を狙っているように見えます。
時間に注目
柿の実が熟す頃に件数が増えます。
10月、11月どちらが多いかは、近くの県が同じ傾向になるわけではありませんでした。
12月から3月にかけても、木に残った実を目当てに出没することがあるようです。
柿の木の熊対策
熊が登れないようにする
柿の木にトタンを巻く方法があります。
今回調べたデータの中では、トタン巻きによって熊を阻止した例が1件、
トタン巻きを熊に壊された例が1件存在していました。
トタン巻きの方法は京都府舞鶴市のサイトに掲載されていました。
京都府舞鶴市が公開しているPDF
柿の実を売る
儲けるのが難しいからこそ放置されて問題が起きている訳ですが、就労支援施設が加工・販売している例があります。うまくいけば地方の振興と熊対策が同時にできる可能性があります。
柿の木を伐採する
市町村の単位で、不要になった柿や栗の木の伐採に補助金を出している場合があります。
熊の交通事故
「熊は頑丈だから車と衝突しても死なない」個人的にそんな印象を持っていたので、調べてみました。
結果としては「死なない」という事はなく、表面的な数字だけを見れば人間より脆い可能性すらあります。
下記のデータは、今回入手した熊出没データのみを集計対象にしています。
交通事故による死亡率
熊が交通事故に遭った件数:82件
交通事故に遭った熊が死亡した件数:9件
車と熊が衝突したとみられるもの:66件
車と熊が衝突して熊の死体が見つかったもの:4件
熊と車が事故を起こした場合の熊の死亡率:6.06%
熊と列車が衝突したとみられるもの:16件
熊と列車が衝突して熊の死体が見つかったもの:5件
熊と列車が事故を起こした場合の熊の死亡率:31.25%
熊との衝突事故によって人間が死亡した例は見つかりませんでした。
参考程度に、人間と車が衝突したときの死亡率です。
警視庁が公開しているデータで、おそらく東京都内の事故です。
引用元:警視庁 歩行者の交通人身事故発生状況(令和5年上半期)
年 | 発生件数 | 死者数 | 死亡率 |
---|---|---|---|
2023 | 5,192 | 55 | 1.06% |
2022 | 4,882 | 50 | 1.02% |
2021 | 4,562 | 63 | 1.38% |
合計 | 14,636 | 168 | 1.15% |
月別の交通事故件数
冬眠期間の事故が極端に少ないようです。
熊が被害に遭う交通事故は秋頃が特に多いようです。
ちなみに、人間が被害に遭う交通事故は6月頃に減り12月に多くなる傾向があります。
今回使用したデータに限れば、熊の出没情報や人身被害が多い時期と、交通事故が多い時期は一致しませんでした。
出没した熊がランダムに事故に遭っているわけではなく、他の原因があるかもしれません。
時間別の交通事故件数
人間が被害に遭う交通事故と比べて、17時台の事故が多い点は同じです。
5時~7時に事故が多いのも似ていますが、クマの方が若干件数が多いように見えます。
20時~21時に事故が多いのは、人間の交通事故には見られない特徴です。
目撃件数が多い時間帯と事故が多い時間帯は概ね重なっていますが、20~21時は事故件数が多くなっています。
上のグラフは、日の短い期間・日の長い期間だけで集計したものです。
夜間のピークの位置が1時間ズレています。熊と人間どちらの影響が強いのかは不明です。
曜日別の交通事故件数
熊の場合は月曜日の交通事故が最多でした。
ちなみに、人間の場合は金曜日が最多です。
出没情報の件数と事故の件数を比べた場合、水曜日に大きな違いが見られます。
それ以外の曜日は概ね似た結果になっています。
人身被害の件数とは、ちょうど逆の相関関係に見えます。
事故の状況
熊出没情報のコメントから事故発生時の状況をピックアップしました。
- 熊が山林や河川敷から飛び出してきた
- 熊がガードレールの下から飛び出してきた
- 熊が法面から下りて飛び出してきた
- 熊がトンネル出入り口付近にいた
- 道路を渡り終えた熊が引き返してきて衝突した
- 熊を避けようとして縁石に乗り上げた
- 自転車で走行中に熊と衝突した
木から落ちても死なない熊が、交通事故では人間より高い致死率になっているのは
「薄暮時間帯や夜間」に「暗い服装」で「乱横断や飛び出し」
と危険行為を網羅していることが原因だと思われます。