熊出没情報

熊出没データを解析してみた(1/3) 熊の出没

2024年熊出没マップ全国

概要

基本情報

こちらのサイトに掲載されている熊出没情報を解析しました。
クマ出没マップ | 汎用投稿システム Sharp9110

データ件数:11,532件
集計期間:2021年~2023年
集計対象都道府県:岩手県(人身被害データのみ)、宮城県、山形県、福島県、新潟県、富山県、石川県、福井県、鳥取県、山口県

「手に入ったデータだけ」で解析します。
データの総数が少なく、偏った結果になる可能性が高いので注意してください。

時間に注目して解析

月ごと

全期間

月別 熊出没情報件数のグラフ

1年の中で6月と10月2つのピークがあります。
直接目撃する例は6月が特に多く、痕跡の発見は10月から11月にかけて多くなります。

2023年のみ

2023年 月別 熊出没情報件数のグラフ

熊による人的被害が話題になった2023年だけのデータです。10月に大きく伸びています。

日ごと

2023年 日別 熊出没情報件数のグラフ
2023年 日別 熊出没情報件数(目撃)のみのグラフ
2023年 日別 熊出没情報件数(痕跡)のみのグラフ

特に件数が多い10月の中に2日連続で件数が落ち込む谷がありますが、10/14、10/21、10/28 いずれも土曜日、日曜日でした。
曜日によって人間の行動が変わり、目撃件数が減っているのかもしれません。

特に山が高い10/23~10/27のなかで10/25は件数が減っています。
安直な方法として10/25の天気を調べたところ、「大気の状態が不安定」となっていました。
前後の10/24、10/26は「秋晴れ」となっていました。
天気によって人間の行動が変わったのか、クマの行動が変わったのかは不明です。

曜日ごと

曜日別 熊出没情報件数(目撃のみ)のグラフ
曜日別 熊出没情報件数(痕跡のみ)のグラフ

熊の目撃が一番多いのは水曜日、痕跡の発見が一番多いのは月曜日でした。
土曜日と日曜日は件数が少なめです。

県ごと・月ごと

月別 県別 熊出没情報件数のグラフ
月別 県別 熊出没情報件数(直接目撃のみ)のグラフ
月別 県別 熊出没情報件数(痕跡のみ)のグラフ

多くの県で6月と10月の出没件数が多くなっています。
福島県は2021年のデータがありません。単純に他の県と比べられないので注意してください。

近くの県は似た傾向になるのか?

よく分かりませんでした。

山形県、福島県は6月 > 10月 となっており、宮城県も当てはまりますが、10月の減少幅が小さいです。
宮城県、福島県は10月 < 11月となっていますが、山形県にはそのような傾向はありません。
富山県、福井県、新潟県は6月 < 10月 となっています。石川県も10月に件数が増えますが、6月を超えるほどではありません。

新潟県、富山県、福井県では10月から11月にかけて件数が多いですが、このうち「柿」 or 「カキ」の文字列を含むデータの件数を集計しました。

10月 11月
新潟県 66 104
富山県 60 52
石川県 2 1
福井県 85 88

仮に石川県に柿の木が少ないのだとしたら、「熊出没は柿が原因」と言えるでしょうが、違いました。
柿の栽培面積を比べると、石川県は富山県、福井県を上回っています。

e-Stat 作物統計調査 「令和4年の都道府県別の栽培面積」

時間ごと

時間帯別 熊出没情報件数のグラフ

熊出没データを時間ごとにグループ化した結果です。
「日中」「夜間」など時刻が不明確なデータは除外しています。
朝と夕方に件数が多くなり、12:00を中心として左右対称に近い形になっています。

目撃のみ

時間帯別 熊出没情報件数(目撃のみ)のグラフ

目撃情報のみで絞り込んだ結果の件数です。
朝より夕方の方がデータが多いです。深夜時間帯にも少数ですが目撃されています。
既に行政から多くの注意喚起が出ている通り、朝と夕方は熊と遭遇する可能性が高いので注意が必要です。

痕跡のみ

時間帯別 熊出没情報件数(痕跡のみ)のグラフ

痕跡を発見した時刻の集計です。
朝または午前中に痕跡を発見する事が多いようです。
夜は件数が急に大きく減ります。日の当たらない時間帯は痕跡を見つけにくいのだと思われます。

宮城県や長野県のサイトに「熊の活動時間帯は『黎明薄暮時』です」と書かれています。
グラフから読み取れる下記の点と矛盾しません。

  • 痕跡の発見が朝に偏っている(昼は新たな痕跡が作られにくい)
  • 正午頃の目撃が少ない

深夜時間帯は目撃・痕跡どちらの件数も減りますが、人間の活動が少ないことが原因と思われます。
熊が深夜も活発に活動しているかは分かりませんでした。
痕跡の発見が朝に多い事から、おそらく深夜も活動しているのでしょうが、前日の夕方に作られた痕跡を発見している可能性も有り得ます。

熊と遭遇しにくい時間帯は存在するか?

熊の目撃が少ない、かつ、痕跡の発見が多い(熊がその場に居ない) → 熊と遭遇しにくい
そんな都合の良い時間帯は無さそうです。

逆に、7:00と18:00は痕跡の件数が少なく目撃の件数が多いことから、熊と遭遇しやすい時間帯の可能性があります。

「目撃のみ」のグラフを見る限り、11:00~14:00の間は熊との遭遇が起きにくいと思われます。
ただし、熱中症に気を付ける必要があります。
2023年
 熊による人身被害:218人 死亡:6人 (環境省速報値)
 熱中症による搬送:91467人 死亡:107人 (消防庁 5月~9月のデータ)

月ごと・時間ごと

月別 時間別 熊出没情報件数(4月~12月)のグラフ
月別 時間別 熊出没情報件数(目撃のみ)(4月~12月)のグラフ
月別 時間別 熊出没情報件数(痕跡のみ)(4月~12月)のグラフ

季節によって熊の出没が多い時間帯に違いがあるのかを調べました。
グラフは月と時間でグループ化した結果です。
1月~3月はデータが少ないため除外しています。
「夕方」など時刻が不明確なデータは除外しています。

どの月も似た形のグラフになりましたが、微妙な違いがあります。
下記のテーブルは、各月ごとに最も件数が多い時間を抽出したものです。

目撃
件数が多い時間 件数
1 15 7
2 11 4
3 10 9
4 17 33
5 18 120
6 18 196
7 18 140
8 18 93
9 18 61
10 17 131
11 16 101
12 16 23

目撃データ
夏場には遅い時間、冬場には早い時間になっているようです。
痕跡データと比べて、昼の長さとの関連が強いのかもしれません。

痕跡
件数が多い時間 件数
1 8 3
2 11 2
3 8 1
4 10 6
5 9 14
6 9 17
7 6 22
8 6 26
9 6 22
10 8 57
11 8 48
12 10 12

痕跡データ
夏場は発見が早い傾向があります。昼の長さとの関連が若干弱いように見えます。

ネタ

元データに含まれる誤記を紹介します。
皆様もこの時間帯に外出する場合は注意しましょう。

山形県で 2021/06/12 午後15時に2頭(いずれも体長1m)が目撃されています。
新潟県で R3.5.32 8:30 に1頭(体長1m)が目撃されています。

場所に注目して解析

熊の出没が多い場所・少ない場所

熊出没地点を表した地図
  • 山と里の境界で多い
  • 山の中を走る大きな道路で多い
  • 大きな市街地では少ない
  • 深い山の中では少ない

上記の箇条書きは何かを集計した結果ではなく、私が地図を目視した感想です。

時期による出没場所

熊の出没件数には6月と10月の2つのピークがありますが、それぞれで出没場所に違いがあるのか比べてみました。
私が見比べた限りでは明確な違いは見つかりませんでした。

熊出没情報のコメントを読む限り、
6月は道路上での目撃が多く、10月は柿の木や畑周辺での目撃・痕跡が多く見つかっているようです。
この結果だけを見ると「秋になると山から下りてくる」という印象を持ちますが・・・

検索文字列(部分一致検索)6月10月
{道,運転,走行,線路,橋,路,事故,車}587件404件
{食,爪,枝,折,フン,糞,カキ,柿,木,畑,壊}227件572件

6月と10月で熊の出没地点に大きな偏りがないことから、熊は季節によって長距離移動する訳ではなく、ある程度決まった範囲で生活していて、秋になると近場にある畑へ出てくる頻度が上がるのだと思われます。

新潟県 (6月と10月の件数差が小さい)

新潟県6月のみの熊出没情報を表した地図
新潟県10月のみの熊出没情報を表した地図

山形県 (6月 > 10月)

山形県6月のみの熊出没情報を表した地図
山形県10月のみの熊出没情報を表した地図

マーカーの色(出没年)が偏っていることから、2022年は6月に出没が多く、2023年は10月に出没が多かったことが分かりますが、マーカーの位置は似ているように見えます。

富山県 (6月 < 10月)

富山県6月のみの熊出没情報を表した地図
富山県10月のみの熊出没情報を表した地図

6月は氷見市と南砺市の辺りで若干多いように見えます。
10月は常願寺川沿いと呉羽丘陵沿いで差分がありますが、2023年だけに偏っています。

各県ごとの特色

岩手県

人身被害のデータだけしかなく、出没の傾向は分かりませんでした。
人身被害が深刻だと考えているのかもしれません。

宮城県

件数は多いですがコメントが書かれておらず、特に何もわかりませんでした。

山形県

山形県は熊視点でみると「フルーツ王国」です。
農業被害についてのコメントだけが妙に詳細に書かれていることから、農業被害が深刻だと考えているのかもしれません。

主な農業被害

  • サクランボ:40kg
  • リンゴ:450個
  • 桃:100個
  • スモモ:40kg
  • ナシ:50個
  • ラフランス:40個
  • 柿:120個
  • ブドウ:400kg & 侵入防止網を破く
  • デラウエア(ブドウ):100kg
  • スイカ:50個
  • カボチャ:10個
  • トウモロコシ:500株
  • 精米:20kg
  • 孟宗竹:10本
  • 養蜂箱:3個

熊出没情報のコメントから特に被害の多い物を抜き出しました。
熊の体重よりも大きな被害が出ていることから、数日間連続して被害を受けたか、枝折れによって発生した被害も含んでいるものと思われます。
ブドウ400kgとなると、被害額は100万円に届く可能性があります。

熊出没情報だけで適当に推測した山形県の農業

山形盆地の周辺はサクランボの被害が多くみられました。他の盆地に比べてやや暖かいのかもしれません。

米沢盆地の周辺はトウモロコシ、スイカ、ブドウの被害が見られました。
1年を通して気温が低めで、夏は昼夜の気温差が大きいことが予想されます。気温が低め=牛の飼育に適している となれば、ブランド牛があることも納得です。

庄内平野は赤川沿いにリンゴ、梨の被害が見られました。柿の被害も少し見られました。米沢盆地ほど寒くはないようです。

新庄盆地は他の地域と比べて被害件数が僅かでした。果樹栽培に適していない可能性があります。

福島県

他の県と比べると痕跡のデータが少なくなっています。実際の出没件数はさらに多いと思われます。

福島県の熊出没情報の地図

東北新幹線、東北自動車道の辺りを境に東側は熊出没件数が大きく減っています。
環境省のサイトを見る限り、元々生息数が少ないようです。

能登半島の先端付近や新潟県の弥彦山付近でもマーカーが少ないように見えました。
熊の生存には、ある程度広い面積の森林や山が必要なのかもしれません。

県の西側はマーカーが道路に沿って並んでいます。山がちで人口が少ないものと思われます。

磐梯山の周辺(国立公園)と人口の多い場所(福島市、会津若松市)との境界付近にマーカーが密集しているように見えます。山形県や新潟県でも同じ傾向が見られました。

出没情報のコメントに「花火」or「爆竹」を含むデータは21件あり、そのうち12件は福島県のものです。
熊発見時の対応が他の県よりも派手な印象を受けました。

新潟県

今回入手したデータに限って言えば、新潟県の出没件数が2733件で最多でした。
コメントも詳細に書かれています。

出没情報の座標だけで描いた新潟県↓

熊出没情報の座標だけで表現した新潟県

コメントに「米」「コメ」「稲」を含むデータは29件存在し、新潟県が最多でした。(2位は富山県と福井県の20件)

周囲を5つ(6エリア)の国立公園に囲まれていて、国立公園の数は北海道に次ぐ2位(長野県と同じ)です。
国立公園は出没情報の空白地帯があり、公園の周囲でマーカーの密度が高くなっています。
福島県境にも空白地帯が見られますが「越後三山只見国定公園」「奥早出粟守門県立自然公園」というエリアになっているようで、自然が豊かな事は確かです。
海沿いに弥彦山がありますが、山としては珍しく周囲に熊の出没情報がありません。

新潟県の熊出没情報を表した地図

錦鯉

新潟県と他の県を比較して特徴的なのが、”泳ぐ宝石” 錦鯉のデータです。
鯉に関するコメントは新潟県内で60件、それ以外の県は全て合計しても1件でした。
下記の地図は熊出没情報のコメントに {鯉,コイ,ゴイ,給餌} いずれかが含まれるデータを抽出した結果です。

錦鯉に関するコメントを含むデータだけを表示した地図

長岡市山古志の辺りにマーカーが集中しています。
「自動給餌機内の鯉の餌を食べられた」「自動給餌機を壊された・池に落とされた」といったコメントがありました。「鯉を食べた」旨が書かれたデータは見つかりませんでした。

富山県

富山県は「出没地点が分かりやすい」印象があります。
市街地や農地が海沿いに1つの塊として存在しており、熊出没情報のマーカーを見ただけで里と山の境界線を把握できます。

富山県の熊出没情報を表した地図

2023年は山から離れた場所でも目撃情報があります。
国土地理院の航空写真と重ねてみました。
私のような素人が見ても「ここが通り道なのでは?」という地形が見えるのが面白いです。
この画像では神通川沿いの出没が少ないですが、2019年と2020年に数件の出没情報がありました。

富山県の熊出没情報を表した地図(一部を拡大)

石川県

能登半島の先端付近はマーカーが少ないように見えます。
山がちで人口が少ないだけなのか、熊も少ないのかは不明です。
半島部分は海沿いにマーカーが多いように見えますが、この傾向は青森県の下北半島と似ています。

金沢市周辺は市街地での出没が少なく、市街地と山の境界付近でマーカーが増えます。
こちらは富山県や新潟県と似ています。

福井県

コメントを読むと、狩猟関係者からの情報連携が多い印象を受けます。
わな猟用の餌として米ぬかを使っているようで、熊が米ぬかを食べた事例があります。

熊とは関係ありませんが、地名の後ろに「地係」という謎ワードが付きます。

長野県

長野県の熊出没情報(一部)

県全体の座標付きデータは見つかりませんでした。一部の市町村だけのデータを表示したマップです。
山と里の境界付近にマーカーが集中している点は他の県と同じです。

長野県では錯誤捕獲が発生した場合に放獣する確率が高いようです。
「錯誤捕獲」という単語と結果が両方とも書かれているデータだけを抽出した場合、全ての熊が生き残っています。
福井県でも錯誤捕獲のデータが公開されていますが、大多数が駆除となっています。

熊が食べていた物
「桑、梨、リンゴ、柿、栗、スイカ、トウモロコシ、鹿」といった定番の物
「トマト、キュウリ」といった低カロリーの物
佐久盆地(小諸市)では特産の「プルーン」の被害がありました。

鳥取県

熊と鹿が直接関係するコメントが3件あります。

  • 罠にかかった鹿を食べていた
  • 鹿を食べていた
  • 鹿を追いかけていた

県の東と西にマーカーが集中しています。
人口密集地が東西に分かれて、間に山があることから、県の東と西で文化が違っているかもしれません。

山口県

都道府県の単位で座標付きの熊出没情報をオープンデータとして公開しているのは、2024年1月時点で山口県だけのようです。(厳密には山口県警ですが)

全224件のデータ中、コメントに「柿」が含まれるデータは20件、「栗」が含まれるデータは4件存在していました。

山口県ではミカンも栽培されていますが、熊出没情報にはミカンの被害は1件も記載されていませんでした。
下記は被害が少ない理由を素人が推測した結果です。

  • ミカンの出荷のピークと熊が冬眠する期間が重なる
  • 生産地が周防大島に偏っている(※周防大島の熊出没情報件数は0件)
タイトルとURLをコピーしました