熊出没情報

熊出没データを解析してみた(3/3) 熊について

熊という生物について

こちらのサイトに掲載されている熊出没情報を解析しました。
クマ出没マップ | 汎用投稿システム Sharp9110

数え方

熊の数え方は「頭」です。

これは熊出没データ内で多数を占めていたという意味です。
全 25,960件のデータのコメント内で「匹」が使われていたのは8件だけでした。

体長

熊出没データに記載されている熊の体長は、多くが0.3m~2mの範囲内、特に多いのが0.5m~1.5mの範囲内です。
ほぼ全てのデータが目測だと思われ、誤差が大きそうなので集計などは行っていません。

現実的な数字で特に大きい値は 3m でした。(福島県 2023/09/25 18:40 ID:502)
最小値は 0.5センチメートル でした。(山形県 令和4年 8/19(金)午後6時55分(鶴岡市大山))
最大値は150mでした。(山口県 2024/06/05 19:30、2024/09/19 03:00、2024/10/13 17:45)
※最小値・最大値は誤記の可能性が高いです。

能力

熊が破壊したもの

熊出没データの中から、コメントに「壊」「割」などを含むデータを抽出し、
熊がどのような物を壊したかをまとめました。

壊した物件数
養蜂箱36
壁・トタン・小屋・倉庫28
錦鯉の給餌機15
ガラス11
6
金網・ネット5
コンポスト5
ビニールハウス、マルチシート5
米袋3
箱罠3
2
牧草を入れた袋2
換気扇フード1
電気柵1
トタン巻き1

「壁」は農作業小屋の壁から住居の壁まで様々です。壁の中に作られた蜂の巣や、小屋の中に置かれていた米などを食べた例が多くみられました。

木登り

木に登っている状態の目撃データが294件 (全データの1.13%)
さらに食痕や熊棚など、登ったと思われるデータを含めると1546件 (全データの5.95%)
さらに木に爪痕が残っていた等の情報まで含めると2452件存在していました。(全データの9.44%)

多くの個体が木に登れるようです。
「木に登ろうとしたが登れなかった」という目撃データは1件存在しましたが、柿の木にトタンを巻いていたことが原因と書かれていました。

木から転落する瞬間の目撃例も4件ありました。
福島県 2022/06/18 15:00
福島県 2023/08/31 07:00
山梨県 2024/09/21 21:00
山梨県 2024/09/28 09:00
木から転落死した例や、転落時に負傷して動けなくなった状態の目撃例は見つかりませんでした。

稀な例として、身軽な行動も可能なようです。
・木の上へ逃げた:1件(幼獣)
・木から飛び降りて逃げた:1件
・隣の木へ飛び移った:1件
・柿の木から飛び降りてきたクマに襲われた:1件

木に登る理由

熊が木に登る時期とその木が実をつける時期が概ね一致していることから、食べ物が目当てのようです。
しかし、実が熟していないはずの時期に木に登った例も少数ながら存在していました。
食べ物以外の理由で木に登る理由は不明です。

月ごと 熊の木登り目撃件数のグラフ
木の種類など
1
2
3
4ブナ(新芽を食べていた)
5サクランボ、ブナ、杉、桑
6サクランボ、杉、柿、栗、桑、桜、琵琶、胡桃
7サクランボ、スモモ、ブドウ、ブルーベリー、リンゴ、柿、桃、桑、梅、梨
8ウワミズザクラ、サクランボ、スモモ、ブドウ、ブルーベリー、ミズキ、ラフランス、リンゴ、柿、栗、桃、桜、梨、胡桃
9ブドウ、ミズナラ、リンゴ、柿、栗、桃、梨、胡桃、銀杏
10ブドウ、ブナ、ラフランス、リンゴ、柿、栗、梨、胡桃、銀杏
11ブナ、リンゴ、柿、栗、梨、胡桃、銀杏
12柿、栗、胡桃
月ごと コメント内に存在する木の種類

泳ぎ

熊が泳いでいる状態の目撃例は8件ありました。
他に、熊が泳いだ可能性の高い例が2件ありました。
三重県では海上での目撃例がありました。付近の陸地から少なくとも145m、対岸からは300m以上離れています。

食べ物

熊出没データから熊が食べた(かもしれない)ものを抜き出しました。

食べ物件数
296
133
トウモロコシ(63)・デントコーン(10)73
スイカ46
リンゴ46
蜂蜜・蜂の巣37
35
木の実22
クルミ21
米・玄米21
サクランボ19
18
ニンジン17
何か15
ブドウ15
鯉の餌11
スモモ10
カボチャ9
鹿7
ウワミズザクラ6
放置果実6
6
タケノコ5
ドングリ5
ブルーベリー5
ミズキ5
米糠5
5
ブロッコリー4
蕎麦4
ブナの芽3
ペットの餌3
メロン・マクワウリ3
ラフランス3
孟宗竹3
3
牛の餌3
3
罠の餌3
肥料3
キュウリ2
サツマイモ2
プルーン2
生ゴミ2
イチジク1
コンポスト1
ジャガイモ1
トマト1
ニジマス1
ニンニクの茎(かじった様な形跡あり)1
フキ1
ミカン(廃棄されたもの)1
山菜1
枝豆1
1
水芭蕉の葉1
1
1
金魚1
魚の餌1
鳥の餌1
鶏卵1

家族構成

目撃情報に記載されている個体数を集計しました。実際に家族かどうかは不明です。
目撃状況が「直接」であり、頭数の判別ができたデータ→19773件

幼獣かどうかの判別も不十分なため、この結果から一人っ子の割合を出すことはできません。

目撃された頭数の比率のグラフ
目撃された頭数の比率(2頭以上)のグラフ

1件の目撃情報の中で同時に目撃された個体数の最大値は12頭、同時に目撃された幼獣(らしき個体)の最大数は6頭でした。

人間と関係する行動

熊は人間を避けているか

人間に目撃される前に逃げた場合はカウントされないため、正確な数字は分かりません。
熊が人間を見つけて逃げたというデータは存在しています。

熊出没データ全体から目撃状況が「直接」のデータを抽出、コメントが書かれていない宮城県と人身被害だけが書かれている岩手県のデータを除外。
該当データ:19707件
上記のうち、コメントに「逃」を含むデータ:662件
「逃」が含まれる目撃情報の比率:3.35%
雑な集計ですが、約3%のデータで熊が逃げた・逃げている様子が目撃されています。
他にも「戻った」「立ち去った」という表現があるため、熊が逃げた件数の比率はもう少し高くなります。

上記には熊が車に気付いて逃げた例も含まれています。生身の人間を避ける率は不明です。

逆に人身被害の確率を出してみます。

熊を直接目撃したデータのうち、人身被害だけが登録されている岩手県のデータを除外:22552件
人身被害が発生したもの:182件
熊を直接目撃したとき人身被害に至る率:0.80%

熊と遭遇した場合、襲ってくる確率よりは逃げる確率の方が高いようです。

熊が逃げた例

熊が逃げた、立ち去ったと記載されているデータから、原因が書かれている物をまとめました。
“逃”,”去”といった文字列が含まれているデータを抽出しただけなので、件数は厳密なものではありません。

原因件数
車に気付いた48
車・列車に轢かれた30
花火・爆竹22
人に気付いた16
大声を出した14
クラクションを鳴らした12
人を襲った後逃げた7
車が近付いた4
犬が吠えた3
鈴を鳴らした6
車のヘッドライト2
音を出した2
列車の汽笛1
列車に気付いた1
木の棒を打ち鳴らした1
鉄の棒を打ち鳴らした1
抵抗した1
追い払った1
犬が追いかけた1
熊を蹴った1
熊を殴った1
鎌を振り回した1
応戦した1
モノレールの音1
ブザーを鳴らした1
ガラスを叩いた1
ラジオの音を大きくした1

人間に驚いた熊が後ずさりして川に転落した例もありました。(新潟県 2023/6/10 8:55)

熊が逃げなかった例など

  • 車で接近しても逃げなかった
  • 車を追いかけてきた
  • 目撃者を威嚇して逃げた
  • 熊が逃げた先にいた人が襲われた
  • 熊を追い払おうとして襲われた

柿の木との関係

熊出没情報のコメント内に「柿」・「カキ」を含むデータが831件見つかりました。
全データのうち3.20%、
コメントが書かれているデータに絞れば4.10%が柿と関係しています。

場所に注目

コメントに「柿」「カキ」を含むデータだけを表示した状態(福井県)

コメントに柿、カキを含む熊出没データだけを表示した地図

多くのマーカーが山と里の境界付近に見られました。
柿の木を目指して市街地深くまで入り込むよりは、生息地の近くにある柿の木を狙っているように見えます。

時間に注目

月別 「柿」を含むデータ件数のグラフ
月別 県別 「柿」を含むデータ件数のグラフ

柿の実が熟す頃に件数が増えます。
特に2023年の件数が突出していました。
10月、11月どちらが多いかは、近くの県が同じ傾向になるわけではありませんでした。

12月から3月にかけても、木に残った実を目当てに出没することがあるようです。

柿の木の熊対策

熊が登れないようにする

柿の木にトタンを巻く方法があります。
今回調べたデータの中では、トタン巻きによって熊を阻止した例が1件、
トタン巻きを熊に壊された例が1件存在していました。

トタン巻きの方法は京都府舞鶴市のサイトに掲載されていました。
京都府舞鶴市が公開しているPDF

柿の実を売る

儲けるのが難しいからこそ放置されて問題が起きている訳ですが、就労支援施設が加工・販売している例があります。うまくいけば地方の振興と熊対策が同時にできる可能性があります。

柿の木を伐採する

市町村の単位で、不要になった柿や栗の木の伐採に補助金を出している場合があります。

熊の交通事故

「熊は頑丈だから車と衝突しても死なない」個人的にそんな印象を持っていたので、調べてみました。
結果としては「死なない」という事はなく、表面的な数字だけを見れば人間より脆い可能性すらあります。
下記のデータは、今回入手した熊出没データのみを集計対象にしています。

交通事故による死亡率

熊が交通事故に遭った件数:221件
交通事故に遭った熊がその場で死亡した件数:15件

車と熊が衝突したとみられるもの:191件
車と熊が衝突して熊の死体が見つかったもの:10件
熊と車が事故を起こした場合の熊の死亡率:5.23%

熊と列車が衝突したとみられるもの:30件
熊と列車が衝突して熊の死体が見つかったもの:7件
熊と列車が事故を起こした場合の熊の死亡率:23.33%

熊との衝突事故によって人間が死亡した例は見つかりませんでした。

参考程度に、人間と車が衝突したときの死亡率です。
警視庁が公開しているデータで、おそらく東京都内の事故です。
引用元:警視庁 歩行者の交通人身事故発生状況(令和5年上半期)

発生件数死者数死亡率
20235,192551.06%
20224,882501.02%
20214,562631.38%
合計14,6361681.15%

月別の交通事故件数

年別月別熊の交通事故件数のグラフ
年別月別熊の出没情報件数のグラフ
年別月別熊による人身被害件数
のグラフ

交通事故の件数と出没情報の件数がある程度連動しているため、道路に出てきた熊がランダムに轢かれているとみて良いかもしれません。

大量出没があった2023年は、交通事故のピークが9月なのに対して出没情報のピークが10月と、ずれがありました。
さらに、2023年5月の時点では出没件数が例年並みなのに対して交通事故数が増えていました。

時間別の交通事故件数

時間別 熊の交通事故件数のグラフ

グラフの形は人間が被害に遭う交通事故と似た結果になりました。
人間の交通事故は17時台が最多ですが、熊の場合は18時台が最多となりました。
熊の目撃が多い帯と重なっています。

時間帯別 熊出没情報件数(目撃のみ)のグラフ

曜日別の交通事故件数

曜日別 熊の交通事故件数のグラフ

熊の場合は土曜日の交通事故が最多でした。他の曜日も大差ありませんでした。
ちなみに、人間の場合は金曜日が最多です。

交通事故の件数は2023年に突出していることから、2023年の休日配置や天候の影響を大きく受けている可能性があります。

曜日別 熊出没情報件数のグラフ
曜日別 熊による人身被害件数のグラフ

出没情報の件数と事故の件数を比べた場合、水曜日に大きな違いが見られました。

事故の状況

熊出没情報のコメントから事故発生時の状況をピックアップしました。

  • 熊が山林や河川敷から飛び出してきた
  • 熊がガードレールの下から飛び出してきた
  • 熊が法面から下りて飛び出してきた
  • 熊がトンネル出入り口付近にいた
  • 道路を渡り終えた熊が引き返してきて衝突した
  • 熊を避けようとして縁石に乗り上げた
  • 自転車で走行中に熊と衝突した

木から落ちても死なない熊が、交通事故では人間より高い致死率になっているのは
「薄暮時間帯や夜間」に「暗い服装」で「乱横断や飛び出し」
と危険行為を網羅していることが原因だと思われます。

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