
使用データ
全国の都道府県のサイトに掲載されている熊による人身被害のデータを集めて解析しました。
集計期間:1993年~2024年 (手に入ったデータだけ)
人身被害のデータ件数:766件
被害者数:815人(コメントから推測)
熊出没情報はこちらのサイトに掲載されている物を使用しました。
クマ出没マップ | 汎用投稿システム Sharp9110
上記サイトの目撃情報のうち、人身被害が占める割合は約0.81%になります。
※人身被害データだけしか公開されていない岩手県を除く。
人身被害の内容
負傷箇所
図

上記の画像は、岩手県が公開している人身被害データをもとに負傷箇所に点を打ったものです。
負傷した正確な位置ではありません。「腕」や「頭」程度の大雑把な位置を示しています。
左右の区別も正確ではありません。この図から熊の利き手を割り出すことはできません。
マーカーの設置ロジック
「右頬」など→部位や右左などの場所が細かく書かれている物を優先
「頭」→頭部の上あたり
「顔」→頭部の中心辺り(「鼻」というコメントもありましたが埋まってしまいました)
「両腕」→両方の腕にマーカーを配置
「腕」→前腕・上腕が不明なので、肘を避けつつ肘周辺に設置
「足」→脚・足の区別が不明なので、足首付近に設置
左右が不明なもの→腕や足の内側(胴体側)に設置。または偶数行=右、奇数行=左で設置。
前後が不明なもの→前
負傷しやすい部位
熊は人間の頭部を狙って攻撃してくる可能性が高いようです。
腕部は防御の際に負傷している例が見られました。
下記の表は人身被害の事例単位で集計したもので、
「○○部を負傷した事例数 ÷ 人身被害の事例数」で計算しています。
「人身被害が起きた時、○○部を負傷する確率は××%」といった意味になるはずで、
熊がどこを狙って来るのか、結果的にどこを負傷しやすいのか、が分かるはずです。
※負傷箇所が判別できたデータ(325件)を対象に集計
※「肩」は胴部に含めています。
負傷箇所 | 件数 | 負傷する確率 |
---|---|---|
頭部 | 213 | 65.54% |
腕部 | 149 | 45.85% |
胴部 | 71 | 21.85% |
脚部 | 70 | 21.54% |
下記のグラフは負傷箇所単位で集計したものです。
「○○部を負傷した事例数 ÷ 負傷箇所数」で計算しています。


被害者が死亡した事例
今回入手したデータの中から被害者が死亡した事例、かつ、負傷した部位が書かれている事例を抽出しました。
全ての事例で頭・顔を負傷していました。
日付 | 場所 | 負傷内容抜粋 |
---|---|---|
2001/10/16 | 新潟県 | 顔や手足に重傷を負い、自力で自宅に戻ったが病院搬送後、出血多量によるショックで死亡 |
2010/08/18 | 鳥取県 | 罠にかかったクマと鉢合わせ、頭部を負傷 |
2020/10/01 | 新潟県 | 頭部、顔面等を負傷し、病院に搬送されたが10月11日に死亡 |
2020/10/07 | 秋田県 | 頭蓋骨骨折 |
2021/10/02 | 青森県 | 顔を激しく損傷し、死亡 |
2022/05/25 | 秋田県 | 重傷(顔面外傷)、敗血症性ショックにより死亡 |
2022/07/27 | 福島県 | 頭部を負傷した状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認されたもの |
2023/10/15 | 長野県 | 死因は頭部外傷で、クマの爪痕とみられる傷があった。 |
2023/10/17 | 富山県 | うつぶせで倒れている女性を発見。頭やあごに深い切り傷があり、死因は出血性ショックだった。 |
2024/06/21 | 長野県 | 顔や背中に大きなひっかき傷 |
負傷箇所から見た事前の対策
人身被害のうち約65%の事例で頭部を負傷していることから、ヘルメットの装着がお勧めです。首付近まで達するフェイスガードがあれば、さらに被害の軽減が期待できます。
ヘルメットが無い場合は帽子でも少しだけ効果があるかもしれません。
腕も負傷する頻度が高めです。
山に入るときや散歩するときは長袖を着て行くと若干の被害軽減効果が期待できます。
今回調べた815件中42件(約5%)で背後から攻撃されたと書かれています。
リュックサックのような物で背中を守っておけば、不意打ちの被害を軽減できる可能性があります。
対策の具体例 (MicrosoftのImage Creatorで作成)

負傷箇所から見た非常時の対策
・頭部を負傷する確率が高い(おそらく狙われている)
・死亡事例の全てで頭部を負傷していた
これらの結果を見る限り、非常時には頭部を守ることが重要そうです。
ツキノワグマ情報 | 美の国あきたネット
地面に伏せて両手で首の後ろをガードするように書かれています。
実際に、うつ伏せの姿勢を取った例は2件ありました
①重傷(右腕骨折、左腕裂傷、右足咬傷、頭部咬傷)。ただし顔への攻撃は防げた。
②背中に覆いかぶさってきたが、じっとしていたら離れていった。背中に軽傷。
人身被害のコメントを読む限りでは、人間が死亡するまで執拗に攻撃し続ける印象は受けませんでした。むしろ短時間の攻撃で終わったと書かれている物があります。
人間を捕食しようとしたコメントも見つかりませんでした。
十分に抵抗できる力が無い場合は、防御に徹するだけでも(命だけは)助かる見込みが有りそうです。
私がコメントを読んだ限りでは、襲われても無傷や軽傷で済むような行動は見出せませんでした。
稀な例としては下記がありました。
・尻を噛まれたがポケットに財布が入っていたので怪我しなかった
・噛まれないように口を掴んで押し返した(軽傷)
誰でも再現できるものではなく、実際には重傷を覚悟のうえで致命傷を防ぐくらいしか対策が無いものと思われます。
今回調べたデータ内では、人間が木に登って逃げようとした例は見つかりませんでした。
熊が用いる攻撃手段
人身被害のデータのコメントから、どのような手段で攻撃を受けたか記載されている物を抜き出して集計しました。
1度の被害で「引っ掻き」と「咬みつき」両方を受けた場合もあるため、確率の合計は100になりません。
攻撃手段 | 件数 | この手段で攻撃してくる確率 |
---|---|---|
引っ掻き | 124 | 55.61% |
咬みつき | 104 | 46.64% |
体当たり | 10 | 4.48% |
のしかかり | 9 | 4.04% |
下記のグラフは攻撃手段全体を100として、各攻撃手段が占める割合を表示したものです。
各都道府県が発表しているデータには攻撃手段まで記載されていない事が多く、不明の割合が多くなっています。


熊に攻撃された場合の被害

死亡:16件
重傷:201件
軽傷:212件
無傷:2件
ツキノワグマに襲われた場合の致死率は3.71%です。
上記の他に「負傷」とだけ書かれているなど、被害程度が判別できないデータが380件ありました。
不明のデータが全て重傷・軽傷とした場合、死亡の割合は1.97%となります。
軽傷の中にも「裂傷」などと記載されたデータが含まれていました。単語から受ける印象よりは深刻な怪我かもしれません。
攻撃手段ごとの被害程度


咬みつきの死亡例について、直接の死因は低体温症と記載されていました。

体当たりによる攻撃
全部で10件のデータがありました。
逃げる途中の熊と衝突したのが1件、突然飛び出してきた熊と衝突したのが2件。これらは事故に近い物です。
後ろから突然衝突してきた例が4件ありました。
衝突自体が負傷の原因ではなく、転倒した際に負傷した例や、転倒したところを爪で攻撃された例がありました。
被害者と熊が共に斜面から転げ落ちた後、熊が一旦離れて、再度攻撃してきた例が2件ありました。

のしかかりによる攻撃
熊が覆いかぶさってきた例です。
単純な重さだけなら成人にとって脅威ではありません。
重傷の1件は「縫う怪我」となっているため、爪か牙が当たったと考えるのが自然です。
他の事例でも覆いかぶさった状態で爪や牙で攻撃された旨が書かれています。重さ自体が負傷原因になったとの記載は見つかりませんでした。
被害者の属性
性別



死亡数は男性・女性どちらも7件でした。女性の方が死亡する確率が高いようです。
被害者が女性となっているデータでは、被害発生時の状況として「山菜採り」「農作業中」などがありましたが、男性の被害者にも同様の記述があり、「なにをしていたか」の違いは大きく無さそうです。
死亡した女性の被害者はいずれも70代以上でした。高齢でも元気に動き回れることで熊と遭遇する確率が上がったのかもしれません。
重傷・軽傷の比率にが性差が少ないことから、筋力の差で熊に押し負けた訳ではなく、防御や回避ができなかった可能性があります。
年齢

被害者の年齢は4分の3以上が60代以上となっています。

ほとんどの年代で男性の方が多く被害に遭っています。
90代以上のみ女性の被害件数が上回っています。単純に寿命の差だと思われます。

上記グラフは年代ごとの被害程度の割合を示したものです。
若い世代は軽傷の割合が多いように見えますが、サンプル数が少ないため、正確かどうか分かりません。
年齢が上がっても重傷の割合が頭打ちになっていることから、人身被害は熊との力比べや持久戦ではない可能性があり、単純に体を鍛えるだけでは被害の軽減にはつながらないかもしれません。

件数については古いデータが残っていないので、近年の方が多く見えるだけです。
平均年齢が横ばいであることから、人身被害件数と被害者の年齢は特に関係なさそうです。
人身被害の多い年は全ての人が襲われる確率が高まり、山菜採りなどの行動は必ずしも関係していない可能性があります。
被害者の平均年齢が10年単位で増減していないことから、特定の時代に生まれた人達の一時的な流行による行動が原因なわけではなく、高齢者特有の「誰でもその時が来る」タイプの行動が原因である可能性があります。
何をしていて襲われたのか
分類 | 件数 |
---|---|
山菜・きのこ採り | 163 |
散歩・歩行 | 138 |
農作業 | 110 |
自宅敷地内 | 80 |
狩猟 | 53 |
登山 | 43 |
渓流釣り | 26 |
敷地内(おそらく自宅以外) | 26 |
業務(巡回・測量・工事など) | 23 |
栗(胡桃・銀杏)拾い | 23 |
林業作業中 | 21 |
草刈り | 12 |
ランニング | 10 |
自転車・バイク | 10 |
物音の確認 | 9 |
新聞配達 | 8 |
※分類はコメントを参考にしつつ、私が勝手に決めました。
熊の生息地に近付く行動は全般的にリスクがありますが、中でも山菜採り・きのこ採りのリスクが高いようです。
生身で活動している場合は負傷のリスクがあります。自転車(80代男性)では逃げきれないようです。
車の中で窓を閉めている限りは安全なようで、襲われた例はありませんでした。
人間が対抗した例
日時 | 場所 | 対抗 | 結果 |
---|---|---|---|
2017/07/04 15:30 | 岩手県 | 木の棒で抵抗 | 重傷 |
2018/05/17 15:00 | 岩手県 | 腕で頭を守る | 重傷 |
2018/07/12 13:35 | 岩手県 | 子連れの熊に遭遇。追い払おうとした。 | 熊は逃げなかった。爪による裂傷を負った(軽傷)。 |
2020/06/21 17:00 | 秋田県 | クマの攻撃を腕で防ぎつつ、腰に下げていた鉈を抜いてクマを切りつけた。 | クマは去った。右手首粉砕骨折等の重傷。 |
2020/07/13 09:25 | 秋田県 | 両腕で攻撃を防ぎながらストックでクマを叩いた。 | 後ろにいた別の人物へ向かい攻撃。いずれも軽傷。 |
2021/09/17 03:00 | 秋田県 | 相手がクマだと気付かないまま必死に抵抗。 | クマの攻撃(バタバタとはたかれた)はあっという間で、クマはすぐに立ち去った。(軽傷) |
2022/06/14 06:50 | 秋田県 | 咬まれないよう、クマの口を掴みながら押し返した。 | クマとの力比べになったが、ふとクマが離れて逃げていった。(軽傷) |
2022/06/30 08:20 | 秋田県 | ゴミ出しに向かう際に遭遇。クマとの間にゴミ袋を挟み、クマとの接触を避けた。 | ゴミ袋ごと押された勢いで道路脇のU字溝に転げ落ちた。(軽傷) |
2023/09/08 06:40 | 秋田県 | 鎌を振り回し抵抗した。 | 逃げていった。(軽傷) |
2023/09/18 06:00 | 秋田県 | クマが覆いかぶさってきた。とっさにおもちゃのピストルを取り出し鳴らした。 | 逃げていった。(軽傷) |
2023/11/01 07:30 | 秋田県 | 倉庫でクマと鉢合わせ、スコップで応戦。 | 逃げる際に転倒した(クマによる外傷無し) |
2008/10/17 13:30 | 新潟県 | 襲ってきたクマを追い払おうとして手がクマの口の中に入った。 | 指に軽傷を負った。 |
2019/10/07 05:20 | 福井県 | 犬の散歩中に襲われた。手に持っていたシャベルで応戦した。 | 押し倒され、後頭部を打ち、頭をかまれる。 |
2023/11/04 07:30 | 福井県 | 転倒した際に覆い被さってきた成獣を蹴った。 | クマは逃走した。 |
2023/12/08 16:00 | 福井県 | 追いかけられ襲われた。クマを殴った。 | 逃げて行った。 |
その他の注意点
ガラスの破壊
意外と注意が必要なのは「ガラスの破壊」です。
熊とガラス1枚を隔てた状況は安全ではありません。
今回調べたデータ内で2件、ガラスを破って建物に侵入し、人を襲った例があります。熊が割ったガラスで人間が怪我をした例も1件あります。
熊出没データ全体では、ガラスを割った例が11件存在します。(上記人身被害を含む)
check it out
「物音が聞こえたので確認に行った」
俗に言うフラグです。
結果として熊に襲われた例が9件ありました。他に自宅の台所で熊を発見した例も1件ありました。
原因が熊でも人間でも良い状況ではありませんので、慎重に状況を確認してから行動する必要があります。
子連れ熊の危険性


上のグラフは、人身被害のデータ全件のうち、子連れだと書かれていたデータの比率です。
下のグラフは、熊出没情報から目撃状況が「直接」であり、頭数の判別ができたデータ22618件を対象に、目撃頭数の構成比を表したものです。
熊が単独で目撃された件数:20854
→熊が複数頭目撃される確率:約7.80%
※頭数が不明なデータは1頭と見なしているため、上記の確率はもう少し大きな値になるかもしれません。
人身被害の件数(被害者が複数いる場合は名寄せ):766
人身被害のうち熊が子連れであった件数:99
→人身被害を起こした熊が子連れであった確率:12.92%
数字を見る限り、子連れの熊は若干人身被害を起こしやすい可能性があります。
人身被害の発生しやすい場所
下記は人身被害のデータ(座標が分かったものだけ)を表示した地図です。

里と山の境界が特に多い印象を受けました。元々出没情報が多い地点でもあり、当然の結果ではあります。
里から少し離れた山の中(山菜採り)、山奥(登山)などもありました。
「特に人身被害が起きやすい場所」の条件は見つけられませんでした。
秋田県と岩手県に人身被害のマーカーが集中していますが、人身被害のデータが座標付きで公開されているだけであり、正確な件数を表すものではありません。
人身被害の発生しやすい時間帯
年ごと

2023年は特に多かったことが分かります。
古いデータは入手できない場合が多いため、近年増加傾向なのかどうかは分かりません。


環境省や各都道府県が毎年「堅果類の豊凶調査」という物を発表しています。
熊の人身被害件数とある程度連動しているため、不作の年は警戒を強化すると被害を防げる可能性が高まります。
月ごと

熊が活動する時期はいつでも注意が必要ですが、特に10月が突出しています。
熊の出没情報全体の件数と比べた場合、6月は目撃件数に対して人身被害は少な目、8月・9月は目撃件数が下がるわりに人身被害は多めといった結果になりました。

曜日ごと

人身被害は土日に件数が増えます。


熊出没情報の件数は、平日に多く土日に少ない傾向がありました。水曜日を除けば逆の相関関係があるようにも見えます。
熊が交通事故に遭った件数を見ると、水曜日の件数が最小となっています。
水曜日に人が襲われやすく、熊が轢かれにくい理由は不明です。

時間ごと

早朝は人身被害の件数が多く、注意が必要です。
熊の目撃情報は7:00に午前のピークがありましたが、人身被害はそれよりも早い時間にピークがあります。

月ごと・時間ごと

特に人身被害が多かった月と時間帯
10月の6時:30件
10月の7時:22件
10月の9時:21件
9月の6時:17件
10月の14時:17件
8月の5時:16件
8月から10月にかけて、6時台の被害件数が突出しています。
遭遇防止対策の効果
鈴やラジオを携帯する
遭遇を避ける道具の効果を、遭遇した後のデータで判断するのは無理があります。
予防策の効果が不当に低く評価されている前提で見てください。
総合的にみると、無いよりは有った方が良いです。
熊出没情報の中には「鈴またはラジオの音に反応して逃げた」というコメントが6件(25960件中)見られます。
人間を避ける熊がいるのは確かで、このタイプの熊に人間の存在を知らせることで不意の遭遇は避けられる可能性があります。
被害に遭った例
人身被害データのうち、予防対策の有無が書かれていた:167件
鈴・ラジオどちらか、または両方を携帯していた:19件
人身被害のうち、約11%で鈴・ラジオを携帯していたにも関わらず襲われています。死亡例も1件あります。
被害者が鈴を携帯していた:10件
被害者が鈴だけを携帯していた:8件
鈴を鳴らしたら逃げた:5件
被害者がラジオを携帯していた:9件
被害者がラジオだけを携帯していた:6件
ラジオの音を大きくしたら逃げた:1件
ラジオは熊を追い払う効果が弱い可能性があります。
鈴やラジオが熊を誘引したという記載は見つかりませんでしたが、
2022/6/13 秋田県で「人が集めたタケノコを(人を襲って排除した後に)食べることを覚えたクマ」という記載がありました。鈴やラジオが逆効果になる可能性は完全には否定できません。
2022/5/22 秋田県で発生した被害では、子連れの熊が逃げ遅れた結果襲ってきたのではないかと推測される事例がありました。追い払う方向や熊が逃げるまでの時間的猶予など、何かコツが必要な可能性があります。
林業従事者がチェーンソー使用中に襲われた例があります。(2015/4/17 岩手県)
単純に大きな音を出せば逃げていくという訳ではなさそうです。
鈴やラジオ本体が、熊の爪や牙を防いでくれたという記載はありませんでした。
携帯しているだけではダメだった例
- 鈴を付けていたが、雨除けのカバーをかけていたので鳴らなかった。
- 笛を携帯していたが、あまり鳴らしていなかった。
- ラジオを鳴らしていたが、付近に川や高速道路があり、音がかき消された。
薮を刈り払う
熊が薮へ逃げ込んだという目撃情報が200件以上あります。薮を刈り払うことで、熊が隠れる場所を減らす効果は期待できます。人間と至近距離で遭遇する頻度も減らせるかもしれません。
人身被害に限った場合
・薮に入ったことで襲われた:6件
・薮から出てきた・薮にいた:36件
・薮へ逃げた・薮の方へ移動:1件
人身被害を含まない熊出没情報から検索
・薮から出てきた・薮にいた:127件
・薮へ逃げた・薮の方へ移動:216件
具体的に、どの程度の距離を刈り払ったら何%くらい移動を阻止できるのかは不明です。
熊の侵入を平地の辺縁部分で食い止めていそうな津軽平野と、平地の奥まで侵入されている横手盆地の画像です。
どちらも航空写真を眺めた程度では大きな違いは無さそうでした。


生ごみ、果樹を放置しない
生ごみ
2024年に長野県小諸市で発生した人身被害の周辺図です。
矢印で示しているマーカーが人身被害発生地点、それ以外のマーカーはコンポストを壊されたものです。
正確な時系列は分かりませんでしたが、親子連れの熊が生ごみ目当てに人里を徘徊していた可能性が高いです。

熊出没データの中には、生ごみ以外にも「米ぬか」や「堆肥」に誘引されたとみられるコメントがありました。
果樹
柿の木に誘引されたとみられる熊が人身被害を起こした件数:9件
おそらく自己所有:4件
おそらく非所有:5件
栗の木に誘引されたとみられる熊が人身被害を起こした件数:22件
柿と比べると所有者が不明確でした。
特に問題なのが、他人の家の柿(果樹)に誘引された熊によって襲われた場合です。
因果関係を証明するのは難しく、被害者が泣き寝入りになる可能性があります。
既に市区町村レベルで柿の木の伐採に補助金を出している例がありますが、行政の本気度や住民の行動次第で余計な被害を減らせるかもしれません。
遭遇した場合の対策の効果
熊撃退スプレー
今回入手したデータの中には熊撃退スプレーの使用例は見つかりませんでした。
熊撃退スプレーを持っていて襲われた例は2件ありました。(軽傷1件、不明1件)
うち1件は背後から襲われたと記載があり、スプレーを使う前に襲われた可能性があります。
親子連れの熊を目撃したらすぐ離れる
親子連れが一旦藪に入った後、親だけが引き返してきて人を襲った例が2件ありました。
いずれも秋田県の例ですが、秋田県だけが細かな情報を公開しているという意味であり、実際には他の地域でも発生している可能性があります。
他にも、親子連れまたは子熊を追い払おうとして、親から攻撃を受けた例が2件ありました。
大声を出して刺激してはいけない
熊出没データの中には「大声を出したら逃げた」例が17件ありました。
一方で「大声を出したら襲われた」例も2件ありました。
襲われた2件ではいずれも威嚇目的で声を出しており、内1件では、既に立ち去りつつある熊に向かって大声を出したところ、引き返してきて襲われたと書かれていました。
犬の散歩中に、犬が吠えたことが引き鉄となって襲われた例も1件ありました。
大声を出す前に自分の身を守れる状況を整える必要があります。
後ずさりする、背中を見せて逃げてはいけない
80mの距離で実施して無事 だった例が1件見つかりました。
後ずさりしたところ、歩道の段差で転び、その上をクマが走り去った。踏まれたためケガ:1件
逃げようとして襲われた、逃げて襲われた:7件
逃げる途中に転倒した:3件 (転倒したところを襲われた:1件)
背中を見せたのが原因なのか、後ずさりしていれば襲われなかったのかは何とも言えません。
人身被害の中には正面から襲われた例も多数存在しています。
「熊が攻撃態勢に入っていない状況で無暗に刺激するな」程度の意味だと思われます。