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クマ出没マップ | 汎用投稿システム Sharp9110
概要
基本情報
こちらのサイトに掲載されている熊出没情報を解析しました。
クマ出没マップ | 汎用投稿システム Sharp9110
データ件数:25,960件
集計期間:2021年~2024年
集計対象都道府県:青森県、岩手県(人身被害データのみ)、宮城県、秋田県、山形県、福島県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県(一部のみ)、三重県、鳥取県、山口県
時間に注目して解析
月ごと

1年の中で6月と10月の2つのピークがあるように見えますが・・・

年ごとに分解すると、2023年だけ秋の出没件数が(目撃・痕跡共に)突出しています。
2023年は堅果類が不作だったらしく、食べ物を求めて移動した結果、10月の出没数が増えた可能性があります。
それ以外の年は、6月の出没件数が最多となっています。
特に違いが大きかった10月を対象に、時刻毎の目撃件数を表したグラフです。
グラフの形は他の年・他の月と比べて極端な差はありませんでした。大量出没時も活動時間帯の変化は小さいようです。

日ごと



直近3年間の熊出没情報件数を日付毎にカウントしたグラフです。
8月までは特に大きな差はありませんが、2023年だけは9月~11月にかけて極端な伸びがあります。
件数が落ち込む谷になっているところは、土曜日や日曜日の場合が多いです。
曜日によって人間の行動が変わり、目撃件数が減っているのかもしれません。
痕跡の発見が多い時期は必ずしも同じ季節に集中している訳ではなさそうです。
曜日ごと


熊の目撃が一番多いのは水曜日、痕跡の発見が一番多いのは月曜日でした。
土曜日と日曜日の件数が少ないのは人間の行動が変化する事が原因だと考えられますが、どうして水曜日の件数が多くなるのかは不明です。
他の平日と比べたときの水曜日の特徴
・目撃件数、痕跡発見件数は多め
・人身被害は多め
・熊が車に轢かれる件数は少な目
痕跡については、土日に残された痕跡を月曜日に発見していると思われます。
県ごと・月ごと

多くの県で6月と10月の出没件数が多くなっています。
秋田県の件数が圧倒的ですが、東北地方は全体的に件数が多め、次に北陸が多めでした。
熊出没データを時間ごとにグループ化した結果です。
「日中」「夜間」など時刻が不明確なデータは除外しています。
朝と夕方に件数が多くなり、12:00を中心として左右対称に近い形になっています。
目撃のみ

目撃情報のみで絞り込んだ結果の件数です。
朝より夕方の方がデータが多いです。深夜時間帯にも少数ですが目撃されています。
既に行政から多くの注意喚起が出ている通り、朝と夕方は熊と遭遇する可能性が高いので注意が必要です。
痕跡のみ

痕跡を発見した時刻の集計です。
朝または午前中に痕跡を発見する事が多いようです。
夜は件数が急に大きく減ります。日の当たらない時間帯は痕跡を見つけにくいのだと思われます。
宮城県や長野県のサイトに「熊の活動時間帯は『黎明薄暮時』です」と書かれています。
グラフから読み取れる下記の点と矛盾しません。
- 痕跡の発見が朝に偏っている(昼は新たな痕跡が作られにくい)
- 正午頃の目撃が少ない
深夜時間帯は目撃・痕跡どちらの件数も減りますが、人間の活動が少ないことが原因と思われます。
熊が深夜も活発に活動しているかは分かりませんでした。
痕跡の発見が朝に多い事から、おそらく深夜も活動しているのでしょうが、前日の夕方に作られた痕跡を発見している可能性も有り得ます。
熊と遭遇しにくい時間帯は存在するか?
熊の目撃が少ない、かつ、痕跡の発見が多い(熊がその場に居ない) → 熊と遭遇しにくい
そんな都合の良い時間帯は無さそうです。
逆に、7:00と18:00は痕跡の件数が少なく目撃の件数が多いことから、熊と遭遇しやすい時間帯の可能性があります。
「目撃のみ」のグラフを見る限り、11時台~14時台の間は熊との遭遇が起きにくいと思われます。
ただし、熱中症に気を付ける必要があります。
月ごと・時間ごと



季節によって熊の出没が多い時間帯に違いがあるのかを調べました。
グラフは月と時間でグループ化した結果です。
1月~3月はデータが少ないため除外しています。
「夕方」など時刻が不明確なデータは除外しています。
どの月も似た形のグラフになりましたが、微妙な違いがあります。
下記のテーブルは、各月ごとに最も件数が多い時間を抽出したものです。
月 | 件数が多い時間 | 件数 |
---|---|---|
1 | 15 | 19 |
2 | 17 | 11 |
3 | 10 | 19 |
4 | 17 | 58 |
5 | 18 | 232 |
6 | 18 | 401 |
7 | 18 | 325 |
8 | 18 | 221 |
9 | 17 | 176 |
10 | 16 | 298 |
11 | 16 | 202 |
12 | 16 | 42 |
目撃データ
夏場には遅い時間、冬場には早い時間になっているようです。
痕跡データと比べて、昼の長さとの関連が強いのかもしれません。
月 | 件数が多い時間 | 件数 |
---|---|---|
1 | 8 | 3 |
2 | 11 | 2 |
3 | 8 | 1 |
4 | 9 | 9 |
5 | 9 | 22 |
6 | 9 | 26 |
7 | 6 | 30 |
8 | 6 | 57 |
9 | 6 | 43 |
10 | 8 | 89 |
11 | 8 | 64 |
12 | 10 | 15 |
痕跡データ
夏場は発見が早い傾向があります。昼の長さとの関連が若干弱く、季節との関係が強いように見えます。
無理矢理グラフにするとこんな感じです。

場所に注目して解析
熊の出没が多い場所・少ない場所

- 山と里の境界で多い
- 山の中を走る大きな道路で多い
- 大きな市街地では少ない
- 深い山の中では少ない
- 平地の川沿いで出没情報があるが、当てはまらない所もある
上記の箇条書きは何かを集計した結果ではなく、私が地図を目視した感想です。
時期による出没場所
熊の出没件数には6月と10月の2つのピークがありますが、それぞれで出没場所に違いがあるのか比べました。
私が見比べた限りでは明確な違いは見つかりませんでした。


熊出没情報のコメントを読む限り、
6月は道路上での目撃が多く、10月は柿の木や畑周辺での目撃・痕跡が多く見つかっているようです。
この結果だけを見ると「秋になると山から下りてくる」という印象を持ちますが・・・
検索文字列(部分一致検索) | 6月 | 10月 |
---|---|---|
{道,運転,走行,線路,橋,路,事故,車} | 1342件 | 958件 |
{食,爪,枝,折,フン,糞,カキ,柿,木,畑,壊} | 360件 | 984件 |
6月と10月で熊の出没地点に大きな偏りがないことから、熊は季節によって長距離移動する訳ではなく、ある程度決まった範囲で生活していて、秋になると近場にある畑へ出てくる頻度が上がるのだと思われます。
各県ごとの特色
青森県
津軽平野を囲むように出没情報がありますが、市街地での出没は抑えられています。
平野の周囲にあるリンゴ畑が緩衝地帯となっている可能性があります。

岩手県
人身被害のデータだけしかなく、出没の傾向は分かりませんでした。
人身被害が深刻だと考えているのかもしれません。
仮に人身被害の発生率が秋田県と同じ場合、出没件数は年間1700件くらいになるはずです。

宮城県
件数は多いですがコメントが書かれておらず、特に何もわかりませんでした。
秋田県
今回入手したデータに限れば出没件数は6,051件と、2位の宮城県に倍近い差を付けて全国最多でした。
出没マップが専用システムで閲覧できるうえに、元データもオープンデータとして公開されています。人身被害のデータも細かく記載されており、気合の入り方が違います。
2023年に大量出没が有ったことで件数が膨れ上がっています。
他県に比べて平地や街中での目撃情報が多いですが、同一個体とみられる目撃情報が何件も存在しており、街中での移動経路を追えるレベルです。
市街地で複数人が連続して襲われる人身被害も発生していますが、2023年が特に多くなっています。

山形県
山形県は熊視点でみると「フルーツ王国」です。
農業被害についてのコメントだけが妙に詳細に書かれていることから、農業被害が深刻だと考えているのかもしれません。
主な農業被害
- サクランボ:40kg
- リンゴ:450個
- 桃:100個
- スモモ:40kg
- ナシ:50個
- ラフランス:40個
- 柿:120個
- ブドウ:400kg & 侵入防止網を破く
- デラウエア(ブドウ):100kg
- スイカ:50個
- カボチャ:10個
- トウモロコシ:500株
- 精米:20kg
- 孟宗竹:10本
- 養蜂箱:3個
熊出没情報のコメントから特に被害の多い物を抜き出しました。
熊の体重よりも大きな被害が出ていることから、数日間連続して被害を受けたか、枝折れによって発生した被害も含んでいるものと思われます。
ブドウ400kgとなると、被害額は100万円に届く可能性があります。
福島県
他の県と比べると痕跡のデータが少なくなっています。実際の出没件数はさらに多いと思われます。

東北新幹線、東北自動車道の辺りを境に東側(阿武隈高地)は熊出没件数が大きく減っています。
環境省のサイトを見る限り、元々生息数が少ないようです。
県の西側はマーカーが道路に沿って並んでいます。山がちで人口が少ないものと思われます。
磐梯山の周辺(国立公園)と人口の多い場所(福島市、会津若松市)との境界付近にマーカーが密集しているように見えます。山形県や新潟県でも同じ傾向が見られました。
出没情報のコメントに「花火」or「爆竹」を含むデータは33件あり、そのうち13件は福島県のものです。
熊発見時の対応が他の県よりも派手な印象を受けました。
新潟県
出没情報の座標だけで描いた新潟県↓

周囲を5つ(6エリア)の国立公園に囲まれていて、国立公園の数は北海道に次ぐ2位(長野県と同じ)です。
国立公園は出没情報の空白地帯があり、公園の周囲でマーカーの密度が高くなっています。
福島県境にも空白地帯が見られますが「越後三山只見国定公園」「奥早出粟守門県立自然公園」というエリアになっているようで、自然が豊かな事は確かです。
海沿いに弥彦山がありますが、山としては珍しく周囲に熊の出没情報がありません。

錦鯉
新潟県と他の県を比較して特徴的なのが、”泳ぐ宝石” 錦鯉のデータです。
鯉に関するコメントは新潟県内で60件、それ以外の県は全て合計しても1件でした。
下記の地図は熊出没情報のコメントに {鯉,コイ,ゴイ,給餌} いずれかが含まれるデータを抽出した結果です。

長岡市山古志の辺りにマーカーが集中しています。
「自動給餌機内の鯉の餌を食べられた」「自動給餌機を壊された・池に落とされた」といったコメントがありました。「鯉を食べた」旨が書かれたデータは見つかりませんでした。
富山県
富山県は「出没地点が分かりやすい」印象があります。
市街地や農地が海沿いに1つの塊として存在しており、熊出没情報のマーカーを見ただけで里と山の境界線を把握できます。

2023年は山から離れた場所でも目撃情報があります。
国土地理院の航空写真と重ねてみました。
私のような素人が見ても「ここが通り道なのでは?」という地形が見えるのが面白いです。
この画像では神通川沿いの出没が少ないですが、2019年と2020年に数件の出没情報がありました。

石川県
能登半島の先端付近はマーカーが少ないように見えます。
山がちで人口が少ないだけなのか、熊も少ないのかは不明です。
半島部分は海沿いにマーカーが多いように見えますが、この傾向は青森県の下北半島と似ています。
金沢市周辺は市街地での出没が少なく、市街地と山の境界付近でマーカーが増えます。
こちらは富山県や新潟県と似ています。
福井県
コメントを読むと、狩猟関係者からの情報連携が多い印象を受けます。
わな猟用の餌として米ぬかを使っているようで、熊が米ぬかを食べた事例があります。
熊とは関係ありませんが、地名の後ろに「地係」という謎ワードが付きます。
山梨県
盆地を囲むように出没情報が存在します。東京方面(関東山地)でも結構な数の目撃情報があります。
富士山の山麓にも少数ながら目撃情報があります。

長野県

県全体の座標付きデータは見つかりませんでした。一部の市町村だけのデータを表示したマップです。
山と里の境界付近にマーカーが集中している点は他の県と同じです。
東頸城丘陵、北信五岳、浅間山、八ヶ岳、南アルプスと、山っぽい所は全て結構な数の熊が生息していそうです。
長野県では錯誤捕獲が発生した場合に放獣する確率が高いようです。
「錯誤捕獲」という単語と結果が両方とも書かれているデータだけを抽出した場合、全ての熊が生き残っています。
福井県でも錯誤捕獲のデータが公開されていますが、大多数が駆除となっています。
熊が食べていた物
「桑、梨、リンゴ、柿、栗、スイカ、トウモロコシ、鹿」といった定番の物
「トマト、キュウリ」といった低カロリーの物
佐久盆地(小諸市)では特産の「プルーン」の被害がありました。
鳥取県
熊と鹿が直接関係するコメントが3件あります。
- 罠にかかった鹿を食べていた
- 鹿を食べていた
- 鹿を追いかけていた
県の東と西にマーカーが集中しています。
人口密集地が東西に分かれて、間に山があることから、県の東と西で文化が違っているかもしれません。
山口県
全733件のデータ中、コメントに「柿」が含まれるデータは73件、「栗」が含まれるデータは73件存在していました。これに加えて養蜂箱の被害、蜂の巣を狙った結果の建物の損壊が主な内容となっています。
これらに対策するだけで熊との遭遇を減らせる可能性があります。
山口県ではミカンも栽培されていますが、熊出没情報にはミカンの被害は1件も記載されていませんでした。
・ミカンの出荷のピークと熊が冬眠する期間が重なる
・生産地が周防大島に偏っている(※周防大島の熊出没情報件数は0件)
といった原因がありそうです。